ニュースレター

 第 21 号 平成21年(2009年)9月30日発行

連載
発達障害の理解と支援T

  1、 今回より、発達障害の理解と支援について、最新の動向を交えながら概説します。 第一回は「発達障害の定義・診断」についてです。

発達障害とは、図1で示すように、発達のおのおのの領域で遅れが生じると、それぞれの発達障害診断がつくことになります。しかし、発達の領域は相互に関係していますので、認知の遅れがあれば学習の遅れが生じてくるようになるわけです。
 ただし、認知の遅れがなくても、社会性の遅れがあるということもあり、発達領域にはある程度独立した要素もあります。このように、様々な組み合わせの形が起きるために、発達障害はその個別性が重要視されることになるのです。
 以下に、社会性の発達に焦点をあてて、広汎性発達障害について概説します。
広汎性発達障害
 広汎性発達障害の中心は自閉症です。自閉症は生来性の障害であり、特に社会性のハンディキャップを有する発達障害です。
 現行の診断基準では、次の3つの特性によって規定されています。
(1)社会相互性の障害
(2)コミュニケーションの質的障害
(3)想像性の障害とそれに基づく行動の障害
 これらを最初の提唱者であるローナ=ウィングの名をとって「ウィングの3つ組」と呼んでいます。この3つ組がそろっており、社会生活上困難を来たしている場合、自閉症という診断をつけることになります。また、これらの3つ組を有しているが知能発達の遅れがない場合は「高機能自閉症」、同じく知能発達の遅れがなく、さらに言語発達の遅れもなく3つ組の特性が非典型的である場合は「アスペルガー障害」と現在では定義されています。
 それ以外に知覚過敏性の問題、多動・不注意の問題、協調運動の問題などを併せ持つ場合が多く、広い発達の領域にわたってハンディを生じているのです。
 今号では、社会相互性の障害について説明します。
(1)社会相互性の障害
 社会相互性とは、人との関わり方とも言えます。ただ単に人と関わらない、殻に閉じこもるということだけでは相互性の問題とは言えません。たとえば、全く面識のない人に対して自分の好きなことを話し始め、相手がびっくりしたり腹を立てたりしていてもそれがピンとこない、といった状況は人との関わり方の「質」に問題があると言えるでしょう。

@人への関わり方が一方的である
 人とのやりとりは相手の出方、言動によってその都度変わるものであり、それによって自分の考えや行動も変わっていく、これが「相互性」です。
 先に示したように、しゃべりたいと思ったときに自分がしゃべることだけをしゃべって後はどこかへ行ってしまう。一緒に遊んでいるようで実は相手はままごとの道具・人形のようでしかない。などのように、自閉症の人はこの「相互的なやりとり」が苦手です。

A場にふさわしい行動がとれない
 お葬式では、皆がそろって神妙な顔つきをしています。その状況や雰囲気を感じ取り自分も静かに座っている、ということをするものです。自閉症スペクトラムの人は「場の雰囲気をつかむ」ことが苦手です。お葬式で一人笑っていたり話を高らかにしていたり、などの行動をとることがあります。また自分が周囲からどう思われているかということに気づく力も弱いため、周囲の指摘を理解できないこともあります。

B社会常識が身に付いていない
 「人の私物を勝手に使ってはいけない」ということは、一般的には自然と身につけ皆で共有する社会ルールです。自閉症の人たちは「暗黙の了解」が理解しにくいため、欲しいと思ったら人のものでもとってしまう、ということが起こりえます。よって、我々が常識としている行動を具体的に教えていく必要があるのです。

C感情認識ができず、概念化が難しい
 自閉症の人は、大変な状況にもかかわらずニヤニヤ笑っていたりすることがあります。また抽象的な事象を把握するのが難しいようです。例えば「あ〜仕事がたまって参ったなあ」の「参った」という意味を理解するのに時間がかかるでしょう。また、他人との感情を共有することも難しく、相手が疲れた様子であるにもかかわらず、楽しげに笑い続ける場合などもあります。共感性の乏しさは自閉症の中核をなす部分です。

 以下の(2)コミュニケーションの質的障害、(3)想像性の障害については、次号で詳しく解説する予定です。

(2)コミュニケーションの質的障害
@独語、オウム返し
A立場によって言葉を使い分けられない:敬語の使い方が誤っている、など
Bペダントリー:年齢にそぐわない難しい言い回し
Cパターン的な表現、細部にこだわった話しぶり
D理解している言葉の偏り
E音節・音韻への過度の注意
F行間を読み取ることの困難、慣用表現やひ ゆ(ひ ゆ読)がわからない
G話し言葉以外でのコミュニケーション(アイコンタクト、ジェスチャー)の使用の困難さ

(3)想像性の障害とそれに基づく行動の障害
@考えや気持ちの修正が困難
A見通しのもてなさとそれに基づく不安
B新規場面などに抵抗を示す
@物事の因果関係を予測しにくい
A応用が利かず、行動がこだわりとなって現れる
Bルールや規則に過度に忠実
C収集、記憶する遊びに固執
(参考図書)
『発達障害の子どもたち』
  杉山登志郎著
(講談社現代新書)
『高機能自閉症・アスペルガー症候群 「その子らしさ」を生かす子育て』
  吉田 友子著(中央法規) 
(診療所長 有賀 道生) 

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